龍谷大学は、親鸞聖人*1 生誕の日である5月21日を創立記念日としています。大学として認可された1922年(大正11年)以来、毎年学生主催で「龍谷大学創立記念降誕会(ごうたんえ)」を開催し、今年で103回目を迎えました。そのイベントのひとつである提灯行列は、1976年から続く伝統行事ですが、コロナ禍により2020年以降は中止を余儀なくされていました。この度、5年ぶりに提灯行列が復活することとなり、私たちは見物のため、四条河原町へと足を運びました。
「親鸞聖人降誕会」の提灯行列は、親鸞聖人に敬意を表し、浄土真宗の文化と精神を示すものです。龍谷大学の教員と学生は提灯を手に持って、円山公園音楽堂から祇園、四条河原町を経て、最終的に河原町御池に到着します。龍谷大学吹奏楽団の演奏は厳かでありながら行列に華を添えるもので、京都の夜を一際艶やかに彩っていました。
吹奏楽団は日本の学校において独特かつ重要な位置を占めるものだと思います。学生が音楽の才能を発揮するだけでなく、チームワークを育み、忍耐力を培い、自信を高めるために重要な場となります。中学、高校、大学を問わず、吹奏楽部は音楽を愛する多くの学生を惹きつける、学校文化の中で欠かせない存在です。
吹奏楽は木管楽器、金管楽器、打楽器で構成され、フルート、クラリネット、サクソフォン、トランペット、トロンボーン、チューバ、ティンパニなど、さまざまな楽器が演奏されます。
『響け!ユーフォニアム*2』が海外で人気を集めるにつれ、日本の吹奏楽に対する外国人の関心も高まっています。この提灯行列は、京都を訪れる観光客に、活気に満ちた日本のキャンパス生活を感じさせるものとなったでしょう。
この行列の中で、特に目を引くのが、行列の3列目に位置する五色旗です。旗を持つ人はシンプルな僧服で数珠を手にしていて、学ランや吹奏楽団のユニフォームとは対照的です。
この五色旗は国際仏旗なのだそうです。青、黄、赤、白、橙の五色で構成されており、仏教の五つの智慧(ちえ)を表しています。1950年代から広く使用されており、仏教徒の信仰と団結を表す国際的なシンボルだということです。
提灯行列以外にも、龍谷大学の成就館カフェでは、5月上旬から中旬にかけて、記念メニュー「たんえそば定食*3」が提供されます。豆乳そば、おにぎり、デザートのセットで、価格は600円です。豆乳そばは爽やかで、豆乳とゴマの香りが絶妙に合わさり、想像以上においしかったです。
親鸞聖人には、そばにまつわる逸話があります。
親鸞がまだ比叡山の修行僧だった頃、夜中にこっそり山を下りて一人で修行を重ねていました。このことが噂になったため、和尚はある夜、抜き打ちで皆を仏堂に集め、点呼を取りました。当時の親鸞は「範宴(はんねん)」という名で、和尚が「範宴!」と呼ぶと、「はい」と返事が聞こえたので、和尚はほっとして弟子たちに夜食のそばをふるまいました。
しかし翌朝、弟子たちは夜中の修行から戻ってきた範宴を見つけました。驚いた弟子たちが昨晩そばを食べた場所に戻ると、そこには範宴の木像がありました。その木像の口元にはネギが!前の晩、範宴の代わりに返事をし、そばを食べたのは、なんと範宴が作った木像だったのです。それから、その木像は「そば食い木像」と呼ばれるようになりました。
この逸話から、親鸞聖人の命日ににそばが食べられるようになったとのことです。
龍谷大学の成就館カフェは一般に開放されており、学生証は必要ありません。5月に龍谷大学の深草キャンパスに立ち寄る機会があれば、ぜひ一度味わってみてください。
*1 親鸞聖人(1173-1263):鎌倉時代の僧侶で、浄土真宗の開祖。日本史上初めて公然と肉を食べ、妻を娶った僧侶。他力本願、悪人正機を主張する。
*2 『響け!ユーフォニアム』(英:Sound! Euphonium):武田綾乃による日本の小説。漫画化されたのち、京都アニメーションによってテレビアニメ化された。
*3 学生のアイデアを受けてこの定食の販売を開始。
コメント