どんな展覧会?
ドイツの現代アーティスト、アンゼルム・キーファー(1945年〜)の「過去最大規模のアジアでの展覧会」と称される『アンゼルム・キーファー:ソラリス(Anselm Kiefer: SOLARIS)』が、京都の世界遺産、元離宮二条城で行われてた(6/22まで)。約33点の絵画や彫刻作品が、重要文化財である二の丸御殿の台所と御清所内の空間に展示されるのは、極めて貴重かつ稀有な試みだと感じられた。
早速行ってまいりました
最初に入場した私たちを迎えるのは、天を衝くようにそびえ立つ巨大な造形作品です。絵の具のパレットを思い起こさせる円盤状の構造体を中心に、黒く荒々しい質感の羽根が左右に大きく広がり、私たちは見上げる形でそれと対峙する。円盤と翼は一体となって天へと伸び、作品を支える円柱がそびえ、その基礎の部分には蛇が巻きついていた。蛇は舌を出し、円盤を狙うように頭をもたげ、円盤と蛇が互いにせめぎ合っているように見える。神話の物語の一瞬をとらえ、描き留めたかのような作品だと感じた。
会場の雰囲気
会場内に足を踏み入れると、作品に目を向ける前に、太陽の下にいた目が暗さに慣れようとしていた。この展覧会は現代的な照明を一切使っておらず、すべて自然光のもとで作品を鑑賞することになる。作品の持つ雰囲気と相まって、展示物がこのお城と共にここで数百年もの時を経てきたような錯覚に陥った。


作品の数々
ひとつも見落とさないように会場内を一周しましたが、どの作品も前で長居することに息苦しさを感じました。逆さまにつられて悲鳴を上げているような人物像、さびた鉄の武器が入っている「パンドラの箱」、庭でさまようドレスの幽霊…。私の記憶と重なるものは一つもないし、確信する根拠も呼び起こされる感情も何もないはずなのに、頭の中で自分の声がささやきます。「これが戦争」。
最後の展示
出口に近づくと、ついに最終章にたどりついたという感覚がした。他の作品と同じ色調のキャンヴァスに、物理か化学の方程式のようなものがみっちりと書き記されていた。ドレスの彫刻の上には、惑星の運動軌道や物理法則を示すようなものがあり、繰り返される歴史に新しい「理」の計算で上書きしようとしているのではないかと思った。

おわりに
やるせない気持ちを二条城の休憩場の抹茶ビールで流し込むが。にぎやかにお土産を選ぶ観光客に囲まれていてさえ、まだ頭の中の自分の声は震えながら漂う。「戦争なのか」と。
歴史が再び繰り返そうとうごめいてる、私たちは「戦争」を無視できない時代にいる、そう感じられてならなかった。
参考サイトまとめ
展覧会「Anselm Kiefer: SOLARIS」公式サイト:
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